はじめに
AWSから非常に強力なEC2インスタンスのアップデートが届きました!メモリ最適化インスタンスファミリーの最新世代である R8in, R8ib, R8idn, R8idb インスタンスが、ついに日本の東京リージョン(ap-northeast-1)および欧州(フランクフルト、アイルランド)リージョンで利用可能になりました。
今回のアップデートは、大容量メモリを必要とするだけでなく、「ネットワーク通信」や「EBS(ストレージ)へのアクセス」がボトルネックになりがちだった超大規模なワークロードを抱えるシステムアーキテクトやインフラエンジニアにとって、まさに待ちに待った朗報です。
この機能の概要とメリット
R8iファミリーの拡張インスタンス(R8in, R8ib, R8idn, R8idb)は、AWS専用にカスタマイズされた第6世代 Intel Xeon スケーラブルプロセッサと、最新の第6世代 AWS Nitro カードを搭載しています。
これにより、前世代と比較して圧倒的なパフォーマンス向上を実現しています。
1. CPUパフォーマンスが最大43%向上
- 前世代(R6in / R6idn)と比較して、vCPUあたりのコンピュートパフォーマンスが最大43%向上しています。同じコア数でも、より高速な処理が可能になります。
2. 爆速ネットワーク帯域(R8in / R8idn)
- 最大600 Gbpsのネットワーク帯域幅を提供します。これは、GPUなどを搭載しない通常のEC2(拡張ネットワーキング対応)の中で最大の帯域幅です。
3. 業界最高クラスのEBS専用帯域(R8ib / R8idb)
- 最大300 GbpsのEBS専用帯域幅を提供します。こちらも、アクセラレータ(GPU/ASIC)を搭載しないEC2インスタンスの中で最高のストレージスループットを誇ります。
インスタンスの「サフィックス(接尾辞)」の意味
どのインスタンスを選べばよいか迷わないよう、名前の末尾にあるアルファベット(サフィックス)の意味を整理しておきましょう。
- n:Network強化モデル(最大600 Gbpsの超高速ネットワーク帯域)
- b:EBS強化モデル(最大300 Gbpsの超高速EBS専用帯域)
- d:ローカルNVMe SSD(インスタンスストア)搭載モデル(低レイテンシーな高速一時ストレージが利用可能)
想定されるユースケース
これらの超高性能インスタンスは、以下のような高負荷・大規模な実務環境で真価を発揮します。
R8in / R8idn(ネットワーク特化)のユースケース
- リアルタイム・ビッグデータ分析: Apache Sparkなどの分散メモリ処理フレームワークにおいて、ノード間の大量データ転送をボトルネックなしで実行します。
- AI/MLクラスタ用キャッシュフリート: 機械学習モデルのトレーニングデータやチェックポイントを、超高速ネットワーク経由でGPUインスタンス群に供給するキャッシュサーバーに最適です。
- 大規模インメモリキャッシュ: RedisやMemcachedなどの分散インメモリキャッシュの構築。
- 通信事業者(Telco)向けアプリ: 5GのUPF(User Plane Function)などの超低レイテンシーと大容量スループットが求められる仮想化ネットワーク機能。
R8ib / R8idb(EBS特化・ローカルSSD搭載)のユースケース
- 大規模な商用データベース: Oracle、Microsoft SQL Server、PostgreSQLなど、ミリ秒未満の応答速度と高いI/Oスループットが求められる基幹データベース。
- NoSQLデータベース: MongoDB、Apache Cassandra、ScyllaDBなど、高速なEBS接続(およびローカルNVMe SSDによる一時データ処理)の恩恵を受ける分散データベース。
- 高性能ファイルシステム(HPFS): LustreやGPFS、WekaFSなどをAWS上に構築し、数TB〜数PB規模の並列I/O処理を実行する場合。
注意点や従来の機能との違い
導入を検討する上で、以下の点に注意してください。
EFA(Elastic Fabric Adapter)のサポート制限
分散HPCや機械学習の密結合クラスタで用いられるEFA(Elastic Fabric Adapter)は、すべてのサイズで使えるわけではありません。EFAの極限の低レイテンシーネットワークを利用するには、以下の大規模サイズ(48xlarge以上)でのみ有効化可能です。
48xlarge96xlargemetal-48xlmetal-96xl
世代交代によるコストパフォーマンスの最適化
現在、第6世代(R6inなど)を使用している場合、第8世代(R8i拡張シリーズ)へ移行することで、vCPUあたりの性能が43%向上するため、インスタンスサイズを1段階下げたり、全体のノード数を減らしたりしてインフラ全体のコストを削減できる可能性があります。新世代へのリプレイスに向けたベンチマーク測定を強くおすすめします。
まとめ
今回のR8i拡張シリーズ(R8in, R8ib, R8idn, R8idb)の東京リージョン提供開始は、日本国内で高負荷なエンタープライズシステムやビッグデータ、AI基盤を運用するアーキテクトにとって非常に大きなアップデートです。
「メモリ容量を確保するためにRファミリーを選んでいたが、実はEBS帯域やネットワーク帯域がボトルネックになっていた」というワークロードがあれば、劇的なパフォーマンス改善が期待できます。Savings Plans、オンデマンド、スポットインスタンスのすべてで本日より利用可能ですので、ぜひ検証を始めてみましょう!