はじめに
AWSを運用する中で、「もう少しインフラコストを抑えたい」「手軽にできるコスト削減手法はないか」と悩んでいませんか?そんなインフラエンジニアの皆様に最もおすすめしたいのが、Amazon EBS(Elastic Block Store)のボリュームタイプを「gp2」から「gp3」へ移行することです。
gp3は、従来のgp2と比較して最大20%のコスト削減が期待できるだけでなく、容量とは独立してIOPSやスループットを調整できる柔軟性を備えています。本記事では、gp2からgp3へ移行すべき理由から、本番環境でも安心な「無停止」での移行手順、実務における注意点までステップバイステップで徹底解説します。
前提知識/必要な理由
gp2とgp3の違い・スペック比較
まずは、なぜgp2からgp3への移行が推奨されるのか、その理由を仕様と料金の観点から整理します。
- 料金単価の安さ: ストレージ単価(GB月あたり)が、gp2と比較してgp3は約20%安価に設定されています。
- 性能の独立性: gp2では、ディスク容量(GB)に比例してIOPS(1GBあたり3 IOPS)が決定されるため、高いIOPSが必要な場合は不要に大容量のディスクを確保する必要がありました。一方、gp3では容量とは独立して、必要最小限のIOPSとスループットを個別に設計・プロビジョニングできます。
- 基本性能(ベースライン): gp3は、最小容量であっても「3,000 IOPS」および「125 MB/秒」のスループットが無料で提供されます。
スペック・料金の比較表(東京リージョン例)
以下の通り、gp3はコストパフォーマンスにおいてgp2を圧倒しています。
- gp2ボリューム: $0.12 / GB月(IOPS、スループットは容量依存)
- gp3ボリューム: $0.096 / GB月(3,000 IOPS、125 MB/秒までは無料。それ以上の追加は有料)
具体的な設定手順・設計方法
EBSボリュームのタイプ変更は、EC2インスタンスを停止することなく「無停止(オンライン)」で行うことができます。ここでは、AWSマネジメントコンソールとAWS CLIを用いた手順を解説します。
方法1:AWSマネジメントコンソールから移行する手順
- AWSマネジメントコンソールにログインし、[EC2] サービス画面に移動します。
- 左メニューの [ストレージ] から [ボリューム] を選択します。
- 移行対象となるgp2ボリュームを選択し、右上の [アクション] ボタンから [ボリュームの変更] をクリックします。
- 「ボリュームタイプ」のドロップダウンメニューから [gp3] を選択します。
- 必要に応じて「IOPS」および「スループット」の値を調整します(デフォルトの3,000 IOPS、125 MB/秒で問題なければそのままで構いません)。
- [変更] ボタンをクリックし、確認ダイアログで再度 [変更] をクリックします。
方法2:AWS CLIから移行する手順
本番運用の自動化や、複数ボリュームを一括変更する場合は、AWS CLIの使用が便利です。以下のコマンドを実行することで、即座に移行を開始できます。
aws ec2 modify-volume \
--volume-id vol-0123456789abcdef0 \
--volume-type gp3
※カスタムのIOPS(例: 4000)やスループット(例: 200 MB/秒)を指定して移行する場合は、以下のオプションを追加します。
aws ec2 modify-volume \
--volume-id vol-0123456789abcdef0 \
--volume-type gp3 \
--iops 4000 \
--throughput 200
移行ステータスの確認方法
移行処理はバックグラウンドで非同期に行われます。進捗状況は以下のコマンドで確認可能です。
aws ec2 describe-volumes-modifications \
--volume-ids vol-0123456789abcdef0
出力結果の "ModificationState" が "modifying" から "completed" になれば移行完了です。
実務での注意点
簡単かつ無停止で移行できるgp3ですが、実務で導入する際には以下のポイントに留意してください。
1. パフォーマンスへの影響(I/Oの一時的な低下)
移行処理中(Modifyingステータス中)は、ディスクのI/Oパフォーマンスに一時的な影響(遅延の上昇など)が生じる可能性があります。本番環境で実行する場合は、念のため深夜帯やサービス利用者が少ないメンテナンス時間帯に実施することをおすすめします。
2. 変更の制限時間(クーリングダウン)
EBSボリュームの変更(サイズ変更、ボリュームタイプ変更など)を一度実行すると、完了後であっても次の変更が可能になるまで「6時間」の制限(クーリングダウン期間)が発生します。パラメータの設定ミスには十分注意してください。
3. gp3移行による性能低下の罠(170GB以上のボリューム)
gp2で容量が170GB以上(510 IOPS以上)あったボリュームを、デフォルトのgp3(3000 IOPS、125 MB/秒)に単純移行すると、スループットが低下する場合があります。gp2で170GB以上のボリュームは、バーストを含めスループットが125 MB/秒を超えていることがあるため、移行時にgp3のスループット値を適切に引き上げる(プロビジョニングする)必要があります。移行前に、現在のボリュームの最大パフォーマンスをCloudWatch等で確認しておきましょう。
まとめ
Amazon EBS gp2からgp3への移行は、稼働中のシステムを止めることなく、手軽に約20%のストレージコスト削減を実現できる「クイックウィン(即座に効果が出る施策)」です。
容量と性能が切り離されたgp3は、リソースの最適化という観点でも非常に優れた設計を可能にします。本記事で紹介した手順と注意点を参考に、まずは開発環境や検証環境のボリュームから移行を進め、安全にAWSコストの最適化を推進していきましょう!