はじめに
AWSを自社で利用するだけでなく、パートナー企業や顧客に対してAWSアカウントを提供・管理しているディストリビューターやリセラーの皆様に、運用を劇的に効率化する嬉しいニュースが届きました。
AWSの請求データをカスタマイズしてエンド顧客向けの見積(プロフォーマ)請求データを作成できるサービス「AWS Billing Conductor」において、2段階の請求転送(Billing Transfer)時に請求グループ(Billing Group)を自動作成する機能「Auto-Billing Transfer Billing Group Creation」がサポートされました。
これまでは手動での設定が必要だった複雑なマルチテナントの請求管理がどのように省力化されるのか、その概要とメリットを詳しく解説します。
この機能の概要とメリット
今回のアップデート「Auto-Billing Transfer Billing Group Creation」は、主にAWSディストリビューター、下流のセラーパートナー、そしてエンド顧客という「2段階(2-level)の請求転送」を行う環境に向けて設計されています。
エンド顧客がセラーパートナーからの請求転送(Billing Transfer)を受け入れた際、AWS Billing Conductorの請求グループがバックグラウンドで自動的に作成されるようになります。
主なメリット
- 運用の完全自動化: 新しいアカウントが追加されるたびに、管理者が手動でAWS Billing Conductorコンソールから請求グループを作成・設定する手間がゼロになります。
- 設定漏れの防止と迅速なデータ提供: 手動設定を挟まないため、エンド顧客が転送を承認した瞬間から、パートナーに対して見積(pro forma)コストデータが即座に利用可能になります。見積データ生成の遅れや設定漏れによるトラブルを防ぎます。
- 料金プランの自動適用: 自動作成される請求グループに対して、あらかじめ指定した「AWS Billing Conductor料金プラン(Pricing Plan)」を自動的に適用させることができます。
想定されるユースケース
この機能が最も効力を発揮するのは、以下のようなマルチティア(多階層)でのAWSリセラービジネスを展開しているケースです。
例えば、以下のような構成です:
- AWSディストリビューター(1次代理店): Billing Conductorを使用して全体の請求を管理。
- セラーパートナー(2次代理店): エンド顧客に対して独自の付加価値をつけてAWSを再販。
- エンド顧客: 実際にAWSリソースを消費するテナント。
エンド顧客のアカウントが新しくセラーパートナーの傘下に紐付けられた際、ディストリビューター側で特別な作業をすることなく、そのエンド顧客専用の請求グループと指定した割引/プレミアム料金プランが自動でマッピングされます。
注意点や従来の機能との違い
従来の手順との比較
従来は、新しい請求転送が成立するたびに、管理者が以下のプロセスを手動(またはカスタムスクリプトを組んでAPI経由)で実行する必要がありました。
- 請求転送の承認を検知する
- AWS Billing Conductorにアクセスする
- 新規の請求グループを作成し、対象アカウントを所属させる
- 適切な料金プラン(Pricing Plan)を紐付ける
本機能の登場により、インバウンドの転送関係ごとに「1回限りの初期設定(Preferenceの設定)」を行っておくだけで、上記のステップがすべて自動化されます。
新しいAPI操作
この自動化設定は、AWSマネジメントコンソールの「Billing Transfer」詳細ページから有効にできるほか、新しく追加された2つのAPI操作(Preferenceの設定・取得)を使用することで、IaC(Infrastructure as Code)や自社の管理システムへの組み込みも可能です。
以下は、APIやAWS CLIを介して請求転送時の自動作成設定を有効化する際のイメージです。
// 請求転送設定において自動作成設定(Auto-Billing Transfer Billing Group Creation)を有効化する設定例
{
"BillingTransferPreference": {
"AutoCreateBillingGroup": true,
"DefaultPricingPlanArn": "arn:aws:billingconductor::123456789012:pricingplan/example-pricing-plan-id"
}
}
まとめ
今回の「Auto-Billing Transfer Billing Group Creation」のサポートにより、AWSをパートナービジネスやマルチテナントで提供している企業の運用負荷は大幅に軽減されます。特に、ビジネスの規模が拡大し、管理するアカウント数が数十から数百へと増えていくフェーズにおいては、ヒューマンエラーを排除しつつ、迅速に顧客へ正確なコストデータを提供できる非常に重要なアップデートです。
すでにAWS Billing Conductorを活用して複雑な請求管理を行っているアーキテクトや運用担当者の方は、ぜひこの機会に請求転送設定を見直し、自動化を検討してみてください。